夕方のコール

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「今どこにいますか?」  電話は島貫(しまぬき)からだった。 「え、今? えっと西新宿のあたりだけど」  お客さんとの打ち合わせ後、直帰する予定で、部長に日報を送るために近くのカフェでアイスコーヒーを飲んでいたところだった。  時刻は六時を過ぎている。うっすらと汗をかいた透明のグラスの底で氷はもう溶けかかっている。九月も下旬、日が暮れるのが早くなったように思う。窓の外、うっすら暗い空に灰色の雲が細く長く伸びている。  大江戸線に乗るため、そろそろ都庁前まで歩こうか。パソコンを閉じかけたところで、かかってきたのがその電話だった。 「まじすか。じゃあ飲みに行きませんか?」  電話口の、弾んだような島貫の声にちょっと押されて、私は「いいけど」とぶっきらぼうに答える。  電話を切り早々にカフェを出ると、大久保のあたりにある焼肉屋のリンクが島貫から送られてくる。  通りに出てタクシーを捕まえるとリンク先の住所をそのまま運転手に伝え、車内でスマホをカバンにしまいながら、汗ばんだジャケットを脱いだ。
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