White hope

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White hope

ゴールデンウィークも間近だというのに、バンドには、誰も入らなかったらしい。軽音部のオリエンテーションも、予定していた新歓コンパもどれも不発に終わった。 仕方ないな。なんて思いながら、学部棟の階段を登り、最上階の大講義室の扉をくぐる。教壇ド真ん前の2列目の定位置にソイツはいた。視線が一瞬交差する。相変わらずガラ空きのソイツの斜め前の席に陣取る。 いつもなら、こちらから話しかけることが多いのだが、珍しくソイツが先に口を開いた。 「神田先輩、先週休んでましたけど、風邪ですか? それともそれ以外?」 こういう言い回しをする時は、後者の方が確率が高いと思っているだろうことは、よく知っている。 「最終的には風邪だけど……」 訊ねた当の本人は興味なさげに折り目の少ない参考書をぱらぱらと捲っていた。 「彼女と別れた」 「逃がした魚は大きかった?」 感情の起伏が読み取れない真っ直ぐな視線に、少し肩を竦めてみせながら、先週分であろうレジュメを拝借する。 「去年単位落として、同じの持ってるはずなのに  新入生からプリント盗むなんて……」
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