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京香の指差す先には穴が有った。空間に穴とはおかしな表現かもしれないが、確かに有るのだ。
フラフープ位の大きさの穴が京香の前でぽっかりと空いて見えるのだ。中は暗くて見えないが、自分の中の本能が見ては行けないと告げている。
何故か段々気分が悪くなっていく。
「低級の妖怪なら大した事ないと思ってたから妖気に慣れさせる為に来てもらったけど、この溢れ出る妖気予想以上に厄介な相手みたいだ。私のミスだ、ごめん。今日は帰……」
京香が茉莉の肩を抱いて穴から離れようとしてる時だった。
穴から空気が流れる音がしたかと思うと毛むくじゃらの手が現れ、茉莉の腕を掴む。
妖気の所為か具合が悪くなり茉莉の意識は朦朧としており、叫ぶ気力もなかった。
茉莉の体が穴に惹き込まれる寸前、京香自ら穴に飛び込んだ。
穴の中は夜の様な暗闇が広がっていた。
だが、一切の躊躇無しに京香は前方に駆け出し振り上げた拳を思い切り振り上げる。
「あんた、もてないでしょ? 今時、そんなアプローチじゃ誰にも相手にされないよ。代わりに私が相手してあげる。自慢の拳でね」
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