30 公爵家のお茶会にて

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「ブラックオレンジジュースが気になりますの? 欲しければもらってくればいいんじゃないかしら。確か数量限定って言ってましたわよ。早い者勝ちですって」  私の目がブラックオレンジジュースに釘付けだったのがわかりやすかったのか、物欲しそうに見えていたのか、ビビアン様はストローでグラスの中をかき回しながら、レアな情報を教えてくれました。  貴重な果物ですものね。ふんだんに準備してあるわけではないのでしょう。  人が持ってきたものを物欲しそうにジーと見つめるという、はしたない行為を初対面のしかも高位貴族であるビビアン様にしてしまうなんて……恥ずかしい姿を見せてしまいました。  醜態に目を上げられずに俯いていると 「美味しそうですわね? ブラックオレンジのジュースなんて、めったにお目にかかれるものではないわ。わたしも注文しようかしら」  ディアナが助け舟を出してくれました。 「そうよねえ。わたくしだって、ほんの数回しか口にしたことはないわ。いい機会だから、一緒に飲みましょう? 早くしないとなくなってしまうわよ」 「そうね。ちょっと、行ってくるわ。フローラも行きましょう」 「ええ」  ディアナが席を立つのを見て私もつられるように立ち上がりました。  不躾な態度もビビアン様は気にならない様子で話を続けます。 「二人共、行ってらっしゃい。ここで待ってるわ」  ビビアン様は小さくひらひらと手を振って見送ってくれました。
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