30 公爵家のお茶会にて

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「また、そんな他人行儀なことを。わたくしはディアナのことを幼馴染で親友と思っているのに。親しい者同士で呼び捨てにすることくらい普通でしょう?」  ビビアンと呼んでもらえないことが不満なのでしょう。  親しい友人であれば身分関係なく呼び捨てにするのはよくあること。公爵家の令嬢を呼び捨てにできるのは限られているのでしょうけど。   「親しき中にも礼儀あり、ですわ。ビビアン様。仲が良いからと言って何でも許されると思ってはいませんわ。わたしは伯爵家の娘。ビビアン様は公爵家のご令嬢なのですから、その爵位にふさわしい呼び方をしなくては申し訳ないですもの」  何のかんのと理屈をつけて、頑なに呼び捨てを拒むディアナ。   「わたくしがいいと言っているのに。まったく、お堅いのだから。でも、そこがディアナの良いところなのかしら」  爵位を重んじて彼女を尊重する態度に自尊心をくすぐられたのか、まんざらでもない様子のビビアン様。 「そう言って頂けると、有難いですわ。ビビアン様、ありがとうございます」  ことさら、表情を明るくしてお礼を言うディアナに満足したのか、説得するのを諦めたのか、ビビアン様は食事を再開させました。  食事をする様子がどことなく弾んでいるように見えるので、満足しているのかもしれません。  この後は主にディアナとビビアン様が話題を提供して、当たり障りのない会話をしながら食事を終えました。
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