31 王族の責任

1/31
前へ
/774ページ
次へ

31 王族の責任

 ひんやりとした冷たい空気が肌をなでる早朝。  まだ夜が明けきらぬ時刻に起きて身支度を済ませ、レイ様とやってきたのは北の宮の池のほとり。  珍しい花が咲くという名目につられて見学に来たのは今日で二回目です。 「寒くないかい?」  池のほとりの見晴らしの良い場所に備えられた白いベンチに着いたところで、レイ様の気遣うような声がしました。 「大丈夫です。寒くありませんわ」 「そう? だったら、よいけれど」  初夏といえども早朝はまだ肌寒くて厚着が必要です。  ですから、今朝は肌を露出しない首や手先が隠れるようなドレスに靴はヒールではなくてブーツを履いています。  エルザたちが風邪をひいては大変だからと前日から準備をしてくれました。余計な気を使わせてしまったみたいで申し訳なかったわ。  花の時期は短いと聞いたので『もう一度見たかった』なんて言ってしまったものだから、レイ様が即座に『じゃあ、明日見に行こう』なんておっしゃったのですよね。  
/774ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3385人が本棚に入れています
本棚に追加