31 王族の責任

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 今朝のお供は護衛騎士だけ。  となると、出所は一つしか思い浮かばないのですが、ここで振り向いたら負けのような気がします。確認を取るのはやめましょう。 「ほら、こうすれば暖かいよね」  私の心の葛藤など知らないレイ様は、ササッと距離を詰めてきます。肩がぴったりと触れ合うとショールをかけ直して二人でくるまりました。  ちょっと、大袈裟な感じがするのですけど。ショールがなくても十分に温かいのですけど。 「レイ様、私は大丈夫ですから。ご自分の身体を大事にしてくださいませ」  ショールを羽織るということは、寒さを感じているからでしょう。私は十分に防寒対策をしてくれましたから、さほど寒さを感じません。  それよりもレイ様が心配です。風邪など召したら大変ですもの。 「俺の身体のことを心配してくれるんだね」 「当たり前です。大事な方なんですから、ご自分の身を第一に考えてください」 「……大事な方?」  驚いた表情のレイ様が小さな声で反芻します。  何か、変なことを言ったかしら?  喜びがにじんだ瞳でじっと見つめるレイ様。 「はい。わが国の王子殿下ですから、国民に、とって、レイ様は……大事な存在……です……よ」  あまりにも並々ならぬ真剣な顔で眼前に見つめてくるレイ様に、若干引きつり声が震えて、語尾が濁ってしまいました。
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