31 王族の責任

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「い、いえ。寝てしまった私が悪いのですから、本当に申し訳ありません」  体を縮こませて謝る私に 「気にしなくていいのに。そんなことよりも、もうすぐ花が咲くよ。見逃さないようにしないと」  そう言って池を指し示しました。  反対の手はしっかりと私の手を握って。まるで、逃がさないよと言わんばかりに……  もしかして、ばれていたのかしら?   レイ様の顔を見ても、微笑みを湛えた表情からは何の感情も窺えません。  ぎゅっと握りこまれた手から、レイ様の絶対なる意志が伝わるようで、心が張り詰めごくりと喉がなりました。  優し気な表情なのに……裏腹な気持ちを感じてしまうのは、私の気のせいでしょうか?  理解しがたい感情を振り払うように、池に目を向けました。私たちは花を観に来たのです。本来の目的を忘れるところでした。  豊かに茂った緑の葉の合間から蕾がいくつも顔を出しています。  朝日が昇る直前、固く引き結んだ花びらが綻んでくる時間まで、ほんの少し。 「冷えてきたね。もうちょっと、こっちにおいで」  そういえば……さっきよりも寒くなったような。  ぶるっと寒さで震えると思わず腕をさすりました。明け方が一番冷えるというのは本当ですね。  私の仕草を見逃さなかったレイ様が、起きた拍子に離れていた隙間を埋めるように、腰に手を当て私を引き寄せました。  
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