31 王族の責任

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「やっぱり、冷えてるね」  私の身体を抱きしめながら、心配そうな声が落ちてきます。  足元から冷気が立ち上り体を冷やしてしまったようです。冬の寒さよりはましですけれど、昼との寒暖の差がある分寒さへの調整が難しい。 「レイ様の方が冷えますよ。私は大丈夫ですから」  私の身の心配より、レイ様の身体が大切です。いつもよりも厚手のシャツにコートを羽織っていらっしゃいますが、それでも十分とは言えないかもしれません。  先日も同じような時間帯に来たのですけれど、今日の方が寒いような気がします。夏に向かう不安定な時期、気温も日々変化するのでしょう。 「俺は丈夫だし、滅多に体調を崩すこともないから……」  途中で言葉が途切れて思案気な顔をしたと思ったら 「ほら、こうするとお互いに温かいよね? これなら風邪をひく心配はないんじゃない?」  抱き寄せた身体を腕の中に閉じ込めるように抱きしめたレイ様。冷えた私の身体を温めてくれる優しいレイ様。  温かい。  確かにそうなのですが。  レイ様、過保護すぎませんか?  そう問いかけようとレイ様を見上げると私を見つめるなんとも幸せそうなレイ様の眼差しに言葉を失いました。  溶けてしまうのではないかと感じるくらいの甘いまなざしに、ドキドキと胸が高鳴りざわつく気持ちを抱えたまま、レイ様から目が離せませんでした。
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