31 王族の責任

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 私、どこか、おかしいのでは?  病気とかでは……ないと、思うのですが。  今まで抱いたことのない不可解な気持ちは、なんと形容すればよいのでしょう?  深く探るととんでもない結論に至るような気がして、開きかけた謎の扉の前で思考を躊躇していると 「もしかして、まだ足りなかった?」 「えっ?」  不意に声をかけられた驚きで思考が停止した途端、扉が消えてしまいました。  解明できなくてなんとなくホッとしたような、答えの見つからない問題を前にしてモヤモヤしているような、相容れない複雑な思いが残りました。   「まだ、寒い?」  気づかわし気に様子を窺うように控え目な声が耳に届きます。  レイ様をあまりにも見つめるものだから、不満があると勘違いなさったのかしら?  「いいえ。大丈……」    返事の途中で、膝裏を抱えられたと思ったらレイ様の膝の上にのせられてしまいました。  素早い動きに抵抗する時間も与えられません。  最近は要領を掴んだのか動作がスムーズであっという間なのですよね。いつも隙を狙っているような気さえしますが、それはさすがに、私の気のせいかもしれません。    シトラスの爽やかな香りが鼻を掠めます。いつものレイ様の匂いに安心感を覚えて、気持ちが落ち着いてきました。
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