31 王族の責任

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 白々と夜が明けて、いよいよ朝日が昇り朝がやってきます。  私たちは座ったベンチから池を眺めました。  大きく丸みのある葉が青々と茂った中に、細長くのびた茎の上にはふっくらとしたまあるい蕾があちらこちらと顔をのぞかせています。  スッと伸びた茎は凛として、キャンドルの灯りような丸みを帯びた花は可憐でどこか神秘的。  蓮という名の水生植物だそう。主に東方で見られる花だとかで、これも桜同様ジュラン皇国から贈られたものだとレイ様が教えてくれました。  淡いピンク色をした花びらが少しずつ少しずつ開いてゆきます。  蕾が朝日に照らされて生気を浴びたかのようにゆっくりと膨らみ始め、花を咲かせました。  その様子はまるで神聖な儀式を目の当たりにしているかのようで、瞬きをするのも忘れて見入っていました。しばらく花が咲く様子を一心に眺めていました。 「音は聞こえましたか?」  花が咲く時にポンという音がするかもしれない。  初めて蓮を見た時にレイ様からそんな話を聞いたので、今日は耳を澄まして集中してみたのですけれど。 「いや、聞こえなかったね。残念ながら……」 「やっぱり……」  花が咲く音を聞く。実は今日の目的の一つでもあったのですが、終ぞ叶うことなく終わってしまったようです。がっくりと肩を落とす私。
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