31 王族の責任

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「ローラおねえちゃん、会いたかったあ」  嬉しそうに私にしがみついています。昨日会ったばかりなんですけれど、久しぶりに会うような物言いに苦笑いしつつ、腰を落としてリッキー様を抱きしめました。  ふくふくとした柔らかさと親愛のこもった声音が胸に響いて心が癒されます。リッキー様は天使ですね。   「リッキー。いきなり部屋に入ってきて、最初にすることがそれか?」  癒しの天使に顔を綻ばせていると、レイ様の少しばかりの呆れとともに厳しさを含んだ声が頭上から降ってきました。 「レイお兄ちゃん」  怒ったような顔で見下ろすレイ様に睨まれたリッキー様の表情がだんだんと曇っていきます。 「リチャード殿下」  一足遅れて部屋に入ってきた人物が、肩で息をしながらリッキー様を認めて名前を呼びました。  あとを追いかけてきたのでしょう。  リッキー様付きの侍従エイブ。金茶の髪と瞳。眼鏡をかけた三十くらいの若い付き人です。  よほど慌てていたのでしょうか。少しばかり眼鏡がずれていますね。  リッキー様は廊下をずっと走ってきたのかしら?   小さい子供はすばしっこいのでエイブは油断してしまったのでしょう。
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