31 王族の責任

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 ユージーン兄上って、騎士団に所属していらっしゃる第二王子殿下ですよね。 「は、はい」  エイブの声がうわずって、顔が若干引きつっているように見えるのですが……気のせいですよね。  エイブの反応を満足げに眺めた後はいつもの穏やかなレイ様に戻りました。  緊迫した空気が弛緩して、リッキー様の表情も明るくなりましたね。相変わらず私に抱き着いていますけど。  異様な雰囲気を察したのか部屋の隅に逃げていたマロンが、リッキー様の足元に来て何事もなかったように、ノンキに毛づくろいを始めました。    それにしても、レイ様は厳しい面も持ち合わせているのですね。  甘々な所しか見えていなかったので、ちょっと意外でした。  些細なことだと思っても最悪な事態に発展することもあるかもしれません。時には心を鬼にして叱ることも必要なのでしょう。 「レイニー殿下。お茶の用意を致しましょうか?」  まだ少し張り詰めた空気が抜けきらない中、エルザの温かみのある声がしました。  気分転換に最適な提案に、一気に場が和みました。
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