31 王族の責任

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「そうかい? 俺が小さい頃に見ていた本もたくさんあるけれど、リッキーのために揃えた本もあるんだ」  確かによく見てみると、やや年季の入った色褪せたような背表紙の中に新しいものが混ざっています。先ほどリッキー様が迷うことなくこの場所へと直行したのは、図書室へも通い慣れているからなのでしょう。 「そうなのですね」 「昔ながらの本もオーソドックスでよいけれど、本にも流行があるからね。新しいものも積極的に取り寄せてるんだ」  レイ様との話の最中に目当ての本を見つけたリッキー様の姿が目に入りました。視線は上の方に注がれていて、本を取ろうとして精一杯背伸びして手を伸ばしていますが、あと数センチというところで届かず。 「えいっ、えいっ」  今度は掛け声が聞こえてきました。  ピョンピョンと何度も飛び始めるリッキー様。本は指先に届くようになったのですが、取り出すには至らず。  一生懸命自分の力で本を取ろうとしている姿が微笑ましく、心の中で頑張ってと応援してしまいます。    レイ様も同じ気持ちだったのでしょうか。思わず二人で顔を見合わせて微笑みを交わしました。
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