31 王族の責任

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 その間もリッキー様は何度も飛び上がっては、本を取り出そうとしています。  大人がいるのですから頼めばすぐに取ってもらえるのに、どうしても自分でやりたいのか、それこそ一心不乱に本を取ることに集中しているみたい。  指に引っかかった本が少しずつ斜めになって、もう少しで取れそう、いえ、落ちそうってハラハラしたところに、レイ様が絶妙のタイミングでリッキー様の脇を抱えて持ち上げました。   「もう少しだったのにー」  不満げに口を尖らせるリッキー様に 「落としたら、本が傷つくぞ。それに怪我をしないとも限らないし」   レイ様がすぐさま諫めます。  リッキー様が手にしている本の表紙は頑丈そうな装丁ですし、落下して足にでも当たったら……軽くではすまないかもしれません。 「ごめんなさい」  先ほどのこともあってかリッキー様も素直だわ。  反省したのは一瞬。すぐに満足そうに本を胸に抱え込むと駆け出しました。 「部屋の中は走らない」  またもやレイ様の注意が飛びます。 「はーい」  元気な返事が返ってきて、走ることをやめたのはよかったのですが、その代わりスキップに変わっていました。あまり効果はなかったようです。
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