31 王族の責任

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「まったく」  レイ様が呆れたように大きく息をつきました。  リッキー様はまだ五才ですから、まだやんちゃなお年頃。レイ様も本気で怒っている様子はなくて、甥っ子のやんちゃぶりに困った風でもあり、かわいらしくもありという気持ちが伝わってきます。 「申し訳ございません」  焦ったように謝ったのはリッキー様付きのエイブ。  付き人である彼からすれば、監督不行き届きだと咎められていると思ったのでしょう。 「いや、まだ五才だからな。すべて完璧になんて無理だろう。まあ、あまり厳しくしすぎてもな、窮屈だろうし。要所要所をきちんと指導してくれればいい」 「心得ました。寛大なお言葉、ありがとうございます」 「ところで、今日は随分と急だったな。いつもだったら先触れがでるはずだが?」  レイ様はエイブをジッと見据えます。  身内といえども気軽に会えないのですね。なんて、他人事のように考えていました。 「申し訳ありません。実は……こちらにいらっしゃるということを偶然……耳にしたリチャード殿下が、どうしても会いたいとダダを……いえ、懇願なさいまして……」   つっかえながら、事の経緯を話すエイブの額に汗が浮かんでいるような。何か都合の悪いことでもあるのでしょうか。 「なるほど。あの一声を聞けば想像はつくけどな」  腕組みをして話を聞くレイ様から、不穏な空気が流れているように感じるのは、私の気のせいでしょうか?
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