31 王族の責任

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「もちろん、妃殿下もお止めになったのですが、ちょっとした隙をついて……申し訳ございません」  エイブはガバっと土下座でもしかねないような勢いで頭を下げました。 「まあ、事情は分かった。では伝言頼めるか? 次からは守秘義務扱いだと伝えてくれ」 「はい。承知致しました」  誰にとは言われませんでしたが、真意は伝わったのでしょう。  頭を下げたまま答えたエイブがやっと顔を上げました。  主語がないので、いったい何を誰の話しているのか、うっすらとしかわかりませんけれど。隠されているということは私が知る必要のないことなのでしょう。 「そうだ。ユージーン兄上に通常の三倍くらい鍛えてもらうように進言しとくから、楽しみにしておくように」  いたずらを思いついたようにニヤリと笑うレイ様とスーと血の気が引いたように真っ青になるエイブ。 「それは……ちょっと、やりすぎではありませんか? 通常の訓練でも大変、いや、十分です。レイニー殿下、お考え直しを」  先ほどよりもさらに苛酷になったらしい訓練に、エイブが取りすがるように抗議しますが 「不意を突かれたり、隙を突かれたり。不測の事態に対応できないとは護衛としても不合格だな。通常の訓練では生ぬるいな。もう一度、一から鍛錬し直した方がいい」  すっかり青褪めてしまったエイブでしたが、見せてしまった失態に抗う術はないのでしょう。
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