31 王族の責任

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 このままでは終わりそうもありませんもの。エイブもどう対応したらいいのか、困り果てているようですし。  ベテランの侍従であれば、経験を基にもうまく納めてくれるのでしょうけれど、まだ若いですものね。   「レイ様の心配もわかりますが」  口を挟んだ途端、二人の視線が私に集中しました。 「ローラおねえちゃん。こっちに座って」  先に言葉を発したリッキー様は、期待に満ちた表情でソファをポンポンと叩きます。隣に座ってということなのでしょう。本を読んでもらう気満々ですね。 「レイ様、私は構いませんよ」  自分の本はまた読む機会はあるでしょうし、可愛らしい天使にお願いされたら断ることはできませんもの。 「しょうがない。今日だけだぞ」  くしゃくしゃと髪を掻きながら、根負けしたのか先に折れたのはレイ様でした。子供には勝てませんものね。  でも、今日だけって……少々、大人げない気もしますが。 「やったー!」  自分の言い分が通って嬉しかったのか、歓声を上げてリッキー様が万歳をしました。 「こら、静かに」  すかさず、人差し指を口に添えてレイ様の注意が飛びます。  今の時間は、私たちの他に誰もいないとは言え、図書室ですものね。ここは使用人たちも利用可能だそうなので、他の利用者がいることもあり得ますから。
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