31 王族の責任

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「あっ」  リッキ様は慌てて口を両手で押さえました。かわいい仕草に笑みを誘われます。  私はリッキー様の隣に座りました。  レイ様はL字型のソファの空いているところへと腰を下ろしました。レイ様の姿が斜めに見える格好です。  マロンは窓越しの日の当たる場所が気に入ったのか、レースのカーテンに隠れているようです。丸くなったシルエットがかわいい。  リッキー様から本を受け取り、ページを開きました。それから耳に届くくらいの小さな声で、読み始めました。  しばらく、私たちの様子を眺めていたレイ様も読書に専念することに決めたようで、本のページをめくる音が聞こえてきます。それにしても、重厚な装丁で分厚い本だわ。何を読んでいらっしゃるのかしら? 「ローラおねえちゃん。続きを読んで」 「ごめんなさい」  興味はちらりと目に映ったレイ様の本へと行ってしまい、話が途切れてしまいました。  リッキー様は続きが気になるようで、目をキラキラさせながら待っています。私は気を取り直して本を読み始めました。  一冊、読み終えると 「もっと、持ってくるね」  ぴょんとソファから降りると、先ほどの書架の方へと足早に駆けて行きました。その後ろ姿をエイブが追いかけます。
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