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うまいこと、リリア嬢に引っかかってくれて、暴走してくれてよかったわ。こちらが手を下すことなく事を終えたことが何よりも幸いな事。僥倖と言ってもいいかもしれないわね。
「リリアさんは平民育ちだから、彼らが幼少期から育てたわけではないし、兄夫婦が亡くなって引き取ったのでしょう? 年齢的にも分別のつく年頃ですもの。世間的には彼女の行動は褒められたものではないけれど、だからと言って、彼らに責任を押しつけようとは思わないわ。謝罪も誠意のあるものだったし、何も言うことはないわ」
シャロン様は心底満足しているよう。
「念願が叶ってよかったですわ」
「そうね」
わたしたちは顔を見合わせて笑い合った。
婚約解消が成立した後、胸がすく思いでシャロン様とお祝いをしたけれど、またここで祝杯を上げたい気分だわ。
「せっかくの縁ですものね。チェント男爵家とは、これからもよいお付き合いができればと思っているのよ。それよりもテンネル家には、それ相応の報いをとは思っているけれど。フローラを大事にするどころか、虚仮にするような扱い。そちらの方が許せない。腹が立つわ」
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