32 ディアナside④

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 シャロン様はそのことを思い出したのか、怒りで拳を握りしめている。  そうよねぇ。  あれは本当に酷かったわ。わたしだって、怒りで報告書を握りつぶしてしまったもの。ぐしゃぐしゃになった報告書は使い物にならず、また新しく作ってもらう羽目になったもの。そのくらい、酷かった。  あの時のことを思い出して、沸々と湧いてくる感情を落ち着けるために、わたしは紅茶を口にした。  オレンジを取り出してナイフで切って食べる。酸味が程よく緩和されて甘みが加わり美味しい。  胃の中に食べ物がおさまるとだいぶ落ち着いてきたわ。  それにしてもこのフルーツティー。これは女性に受けるのではないかしら。  紅茶を堪能しつつ今後の展開にも頭を巡らせる。  テンネル家のことは色々と考えてはいるけれど。  ともかく、シャロン様たちが気に入って、これからチェント家と懇意にしていくとなると、テンネル家とチェント家が婚約関係にあったとしても、何か変化があるかもしれないわね。楽しみだわ。  それにしても、度胸があるわね。  普通は婚約破棄させた元凶の家がその相手に商談なんて持ち込まないでしょうに。シャロン様たちが最初から好意的だったからこそ、成立したことよね。じゃなきゃ、速攻つぶされているわ。 「そう、そう。スイーツとカフェの宣伝も兼ねてパーティーを開こうと思っているの。それで、招待状を送ろうと思っているのよ。ディアナちゃんも招待するから、ぜひ来てちょうだいね」  平常心を取り戻したシャロン様がにこやかに話しかける。
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