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「あの……実は……」
しばらく、もじもじしていたフローラが、おずおずと話し出した。
「西の宮の侍女たちからお召替えをと言われるので、それに甘えてしまって着替えたの。いつもなら、着替えてくるのだけれど、急いでいたからそのままになってしまって。ごめんなさい」
なぜか、謝るフローラ。
「いえ。咎めているわけではないのよ。ちょっと、珍しいものを着ていたから」
苦笑気味なシャロン様。
藤がデザインされた夜明けを思わせる東雲色のドレス。それにドレープもたっぷり使っているから、シンプルなものを好むフローラの趣味とは正反対。
「それ、わたしのドレスなんです。王宮にまだ袖を通していないドレスがあったものだから、着替えにと思ってフローラにプレゼントしたんですの」
「ディアナちゃんの? よかったの?」
「ええ。ローズ様が王宮で不自由しないようにと作って下さったもので、どうやって着こなそうかと悩んでいたので、フローラに着てもらえると嬉しいわ」
「まあ。そうだったの?」
「……」
事の経緯を聞いて驚きつつも納得しているシャロン様とサーと青褪めて沈黙しているフローラ。
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