33 レイニーside②

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「ディアナ。どういう意味なんだ。何かあるのか?」 「さて、わたしは帰るわ。忙しいのでしょう? お邪魔して悪かったわ」 「いや、だから……」  おれの問いを無視して立ち上がるディアナに慌てて制するも聞く耳持たず。言いたいことだけ言って満足したのか、ドレスを翻して颯爽と扉の方へと歩いていく。   「ディアナ。待ってくれ」 「……」  呼び止める声にやっと反応する気になったのか、扉の前でピタリと足を止めた。 「あっ、そうだわ。お土産があったのよ。誰か二人ほどついてきてくれないかしら? フローラ手作りのお菓子をおすそ分けしたいわ」  はっ? ローラ?  ディアナの口から、思いもかけない名前が飛び出すと部屋にいた側近たちから、おおっと小さな歓声が上がった。  ちょっと、待て。  整理できない頭で口をパクパクさせている俺の目の前で、セバスが侍従のクリスと護衛騎士のジャックに声をかけている。  名前を呼ばれた二人は、尻尾を振る子犬の如く喜々とした様子でディアナの元へと駆けつけていた。
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