33 レイニーside②

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   部屋の一角ではローラのお菓子を持ち帰ってきたのか、側近たちの間でひと騒動起きていた。 「ほほう! これはまた見事な」  セバスの感嘆の声。 「きゃあ、おいしそう。さすがはフローラ様ですねえ」  侍女のケイトの歓喜の声。 「うっひゃー。うまそう。どれ、味見を……痛っ。何するんだよ」 「ダメですよ。勝手に手を出しちゃ。抜けがけ禁止です」  箱の中に手を出そうとした護衛騎士のアルが、侍女のルーシーから手をはたかれて窘められている。 「ちぇ。ケチ」  たいして痛くもない手をさすりながら口を尖らせているアル。  護衛騎士達の抜け行儀の悪い抜けがけを阻止しようとする侍女達の攻防戦で騒がしい。  二つの白い箱を覗き込み、これが食べたい、あれもいいとお菓子の争奪戦が始まっている。    俺の存在を忘れたかのようなはしゃぎっぷり。 「今日は殿下の執務はございませんし、ここで私たちも休憩に致しましょうか」 「おう。待ってました」  セバスの言葉にみんなの顔が輝く。早速、エルザたちがお茶の準備に取り掛かった。護衛騎士たちはテーブルや椅子を運んでいる。和気藹々の雰囲気の中、一人取り残されている俺。
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