33 レイニーside②

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「殿下、私たちも一休みしてもよいでしょうか?」  そう聞いてきたのはセバス。  テーブルにはクロスが敷かれて、皿やナプキン、カトラリー類もセッティング済み。あとは席に着くだけだ。すでに準備は終わっている。  休憩する気満々の側近たちにノーと言えるわけはない。突っ立たまま言葉を失っていた俺のことなどお構いなし。 「殿下もどうぞお座りください」  席に促されて椅子に座った。  ボーとしている俺はセバス達から見れば間抜けに見えるかもしれない。頭の中はいろんな考えが浮かんでは消え、ぐちゃぐちゃに乱れている。  結果、思考を放棄した。  エリザが淹れる香りのよい紅茶の匂いが漂ってくる。  大皿に並べられたお菓子が目の前に置かれた。  クッキーやマドレーヌ、フィナンシェ、タルトと数種類。これを全部ローラが焼いたのだろうか。  さすがにそれは無理だろうが、あの時のように厨房で楽しそうに料理をするローラの姿が思い浮かんだ。 「どれも美味しそうですねえ」  取り分けている侍女の声がした。  他の者たちは大人しくテーブルに着いている。  さながら、待てをさせられて尻尾を振っている犬状態。護衛騎士達もこういう時にはおそろしく従順である。
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