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34 波乱の予兆
「ここのケーキは絶品ですのよ。どうぞお好きなものをお選びになって」
麗しい微笑みで私達を見つめるのはビビアン様。
ここは王都の中心にある高級な店が立ち並ぶいわゆる貴族街と呼ばれるところ。放課後、帰りの馬車を待っている場所に現れたビビアン様に声をかけられて、あれよあれよという間にお茶をすることになり訪れたカフェ店。
さすが公爵令嬢の行きつけのカフェ。
建物も風格があり豪奢な佇まいで内装も華美になりすぎず上品な店内です。初めて訪れるお店に興味津々の私は思わず店内を見回してしまいました。
あと少しで新しい店舗を開店するので、参考になるのではないかと観察してしまいます。
「さあて、何を頼みましょうか」
弾んだ声でメニュー表を広げるディアナ。
ビビアン様は常連となっているのでしょう。顔を見るなり迷うことなく奥のVIP席に案内されました。
「遠慮なくなんでも好きなものを頼んでよろしいわよ。ここはわたくしが持ちますから」
「いえ、そんなわけには、い」
「ありがとうございます。さすが公爵家のご令嬢、わたし達にまでお気遣い頂いて光栄ですわ」
すかさずお礼を述べるディアナに遮られて次の言葉を失ってしまった私。
学生の身ですから、金銭的な負担をかけるのはよくないと思ったのですけれど。
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