34 波乱の予兆

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「ここは、一見ではなかなか入ることのできない美味しくて評判の最高級店ですものね。わたしも入るのは初めてだわ。ビビアン様、ありがとうございます」  喜々とした笑みを浮かべてもう一度お礼を述べるディアナにビビアン様が満足そうに微笑みます。   「いいえ。実はここしか利用したことがないから他に思いつかなかったのよ。でも、喜んでくれたのなら、わたくしも嬉しいわ」 「まあ。もちろんですわ。ここはよほどの伝手がないと入れませんものね。実はわたし夢だったんです。一度はこのお店に入ってみたいって。ビビアン様に夢を叶えて頂いて感謝してもしきれませんわ」 「それは……ちょっと大袈裟だわ。わたくしは行きつけのお店に案内しただけよ」  ほほっと笑いながら、控え目を装いつつマウントを取ってご満悦な様子のビビアン様に素直に感嘆し美辞麗句を並べてほめそやすディアナ。  なんだか、いつぞやの公爵家のお茶会を思い出してしまったわ。  普段はクールな彼女がここまで相手を上げるなんて見ることはないから、また珍しいものを見させてもらった気分。  ビビアン様の相手をするのが楽しくて楽しくてたまらないって感じがするのは、今回も気のせいではないのかも。  これも令嬢同士の駆け引きの一つなのかしら。
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