34 波乱の予兆

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「そう……」  なにやら思案気な声音に体が震えてビビアン様の顔を見ることが出来ません。  婚約解消は数カ月前の事。両家の話し合いの結果決まったことです。そのことについてクラスでは誰も口にすることはありません。万事、解決したと思っているので、今なぜこの件を蒸し返すのでしょう。私の中では過去の事すっかり忘れていました。 「破棄だろうと解消だろうとそれはどうでもいいけれど、それよりも、どうして格下の令嬢に負けたのかしら?」 「えっ?」 「だって、そうでしょう? 家格が同等か格上ならいざ知らず、相手は男爵令嬢。しかも平民上がりだというではないの。そんな娘に婚約者を奪われるなんて、侯爵令嬢としてはちょっと情けないのではなくて?」  一瞬、何を言われているのか理解できませんでした。   奪われる? 情けない?  思ってもみなかった単語が頭の中をぐるぐると駆け巡って、上手く考えることが出来ません。 「聞いていらっしゃるの?」  返答できない私にビビアン様の叱責が飛びます。先ほどの和やかな雰囲気とは打って変わったビビアン様の鋭い声に体がびくつきました。
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