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「そういうことなので心配には及びませんわ。それに何度も同じようなことは起こらないでしょうから、心配ご無用でですわ」
「そう? だったらよいけれど……」
「お優しいのですね、ビビアン様は。公衆の面前であのような悲愴な場面は見たくないですものね。そのための先ほどの指南だったのでしょう。本当にビビアン様は慈悲深いわ。勉強になりました」
「そう、そうなのよ。わかっていただけて嬉しいわ」
ディアナの見事な解釈と称賛に、味方を得たと思ったのかパッと顔が明るくなったビビアン様はすっかりご満悦な様子。
「それともう一つ」
ディアナが人差し指を立てて続けます。
まだ何かあるのでしょうか?
ビビアン様も頭に疑問符が浮かんでいるような顔。
私もです。すっかり解決したものばかりと思っていましたが……
「侯爵家と男爵家。身分違いとのことでしたが、チェント男爵家は真珠の養殖と貿易で財を成した資産家ですから、テンネル侯爵家が婚姻を結んだとしても損はありませんわ。身分だけは高くても経営は火の車という貴族もあります。それを思えば、身分は男爵であっても十分釣り合うのではないかと思うのですわ。その一点だけは子息も褒められるところですわね」
ホホホッとディアナが小さく笑い声を漏らしました。
彼女の言う通りなのかもしれません。
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