34 波乱の予兆

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「そういえば、フローラ様は次の婚約者は決まりましたの?」  ケーキを食べ終えて落ち着いたのか、ビビアン様の思ってもいなかった質問にティーカップを持つ手が止まりました。声に邪気は感じられません。悪気はなかったんだと思います。ただの好奇心だったのかもしれません。   「いえ。いません。今のところ考えてもいませんわ」  正直に答えました。    「そう、やはり……」  愁いを帯びた頬に手を当てたビビアン様は、そっとため息交じりに呟きました。   やはりって、どういう意味なのでしょう? 「フローラ様は侯爵家の令嬢。いわば高位貴族の優良物件ですわ。求婚者は引く手あまた。そんな立場でしょう?」 「そんな立場だと言われても、私にはわかりません」  両親からは結婚は考えなくてもよいと言われているので、今まで忘れていたくらいです。婚約解消してからまだ数カ月。独身でもいいと思っているくらいなのですから、そのような話をされても迷惑なだけです。 「そう。でも考えた方がよいのではなくて?」 「……もう少し、時間を置いてからでも十分かと思っています」 「時間を置いてからって、随分のんびりではなくて? 結婚適齢期はすぐに過ぎてしまいますわよ」  これは、心配してくださっているのかしら? 
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