34 波乱の予兆

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『気にしなくてもいいわよ。あなたは何も悪いことなんてしていないわ。悪いのはエドガーよ。あんな言葉で非難されるいわれはないの。だから悲しまなくてもいいのよ。卑下する必要もない。フローラ、あなたはあなたのままで、あなたを愛する人はたくさんいるのだから、自信をもっていいのよ」  ディアナは優しく励まして慰めてくれました。  わかっています。  ディアナも友人も両親も、私を愛してくれている。気にしなければいいとわかっているのです。  それでも、胸に突き刺さったとげは抜けないまま、ズンと沈み込む気持ちを抱えたまま、無理やり笑顔を作ります。そうしなければ、泣いてしまいそうだから。  重苦しい気持ちからそらすように、ディアナが明るい話題を振ってくれます。いつまでもうじうじしていても始まらないわ。気持ちを浮上させてディアナの話につき合いました。渡り廊下を抜けると教室まであと少し。  二人であれやこれやと話に夢中になって気分が上向きになった矢先、向かい側に見知った顔を見つけてしまいました。    ビビアン様。  その顔を認めた途端に極度の緊張のためか、一瞬針が刺さったような痛さがぶわっと全身を襲いました。
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