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「ビビアン様、先程のお二人とどちらかへ行かれましたの?」
苦々しく考え事をしている時に勝手に話しかけないでとは思ったけれど、怒ってはダメよ。わたくしは公爵令嬢ですもの。淑女の仮面をかぶり、問いかけた取り巻きの令嬢に飛び切りの笑顔で答えたわ。
「ええ。先日、ローシャス公爵家のお茶会に招かれた折に、フローラ様と知り合いましたの」
「まあ。そうでしたのね」
あのお茶会は限られた者しか招待されていないと聞いていたから、羨ましそうにしているこの侯爵令嬢は残念なことに呼ばれていないのですわ。
「それで、お近づきの印にルナ・テラスに招待しましたの」
「「ルナ・テラスですか」」
他の令嬢達もルナ・テラスと聞いて色めき立った。
それはそうでしょう。
貴族でも入店が許されているのは一握り。その貴族の招待がなければ入れないのですもの。令嬢達の、いえ貴族の憧れのお店なんですもの。
「そうですの。別のお店に案内しようにも、わたくし、カフェと言えばそこしか思いつかなかったのですもの。仕方ありませんわ」
「やはり、違いますわね。わたくしたちが行っても門前払いでまず入れませんもの。さすがに格が違い過ぎますわ」
そうなのよ。わたくしがいなければ彼女達は門をくぐることさえできないの。
令嬢達の羨望の眼差しが心地よいですわ。
そう、わたくしは特別なのよ。
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