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「レイ様、お待たせいたしました。本日は御招待を頂き光栄でございます」
レイ様の待つ部屋へ入るとカーテシーをして挨拶をしました。
「……」
返事がありません。いつもなら、堅苦しい挨拶はよいからと苦笑交じりの声が聞こえてくるのですが。
しばらく待ってみましたが、それでも何の返答もなかったので不敬とは思いましたが、顔をおそるおそる上げてみました。
大きく目を見開いて驚いているレイ様の姿が目に入りました。身動きできず固まっていらっしゃるよう。
「レイ様?」
呼び声にハッとしたレイ様はやっと気づいてくださったみたい。
レイ様と目が合うとはにかんだ笑顔で頭を掻く仕草。頬がほんのり紅く感じるのは気のせい?
それにつられて私も面映ゆい気持ちになっていきます。
「ごめん。あまりにもきれいだったから見惚れてしまった」
さらりと放たれた誉め言葉に、今度は私が驚いて声を失いました。
「……」
たぶん、今のは聞き間違いかリップサービスかどちらかなのでしょう。
それかドレスを褒められたのかもしれません。ローズピンクのドレスとお化粧が華やかさを演出してくれていますから。
「ありがとうございます」
せっかく褒めてくださったのですから、そのお気持ちは受け取らなくてはいけませんものね。けれど、自意識過剰になってはいけないわ。
気を引き締めてみるものの、私を見つめる穏やかな眼差しに引き寄せられるように目が離せなくなりました。なんだか、顔が熱くなってきたわ。
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