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「ローラ。いらっしゃい。待ってたよ」
部屋の端に控える側近達が醸し出す生暖かい空気の中、やっと、いつもの挨拶を受けました。
「お待たせいたしました。レイ様」
返事を返すと相好を崩したレイ様がいました。
それにしても、レイ様ってイケボですよね。高すぎず低すぎず、うっとりと聞きやすい丁度よい声質。私の好きな声かもしれません。
「うん。今日は外を散歩しないかい? 天気も良いし色々と話もしたいしね」
レイ様から緊張した雰囲気が感じられるのですが、ほんのちょっとだけ。
侍女達のテンションもいつもより高かったような気がしますし、ソワソワとした浮足立った空気感に疑問を抱くものの、それを問いかけて答えが出るとは思えないので、気のせいということで自分を納得させました。
「はい」
返事をして差し出された手を取り庭園へと向かいました。
外へ出ると木々の緑が視界いっぱいに広がっていました。初夏の爽やかな風が頬を撫でていきます。
「気持ちがいいですね」
からりと乾いたそよ風が心地よいわ。
「うん。そうだね」
「レイ様?」
上の空な声を不思議に思いながらレイ様の横顔を見上げました。私の視線に気づいたのか咄嗟に笑みを作ったレイ様。
「ああ、ごめんね。考え事してた」
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