36 気づいた思い

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「もしかしたら、執務がお忙しいのでは? 私はお暇致しますので、お気遣いなさらずともよろしいですよ」    リッキー様の後の流れでレイ様の元へ訪問するのが半ば習慣となっていましたが、必ずそうしなければならないというわけではありませんものね。  お忙しいでしょうに私なんかのために、レイ様の貴重な時間を使って頂くのも気が引けてしまいます。 「ごめん。そうじゃないんだ。仕事はすませているから何の心配もしなくていい。何でもないから、帰らないで」  懇願するように切ない瞳で見つめられて、手をぎゅうと握りしめられて、ドクンと心臓が跳ねました。  色香を纏った表情にドキドキしてしまいます。レイ様ってこんなに艶麗な方だったかしら?    「そうなのですね。勘違いをしてしまって申し訳ございません」 「いや、いいんだ。この前は悪かった。仕事が入ったばっかりに途中で帰らせてしまって、どれだけ後悔したことか……」  悔しさに滲んだ声で謝るレイ様にちょっと大袈裟ではと思いつつも、自分との時間を大切にしてくれている気持ちも窺えて、蝋燭の火が灯ったように温かい気持ちになりました。 「レイ様……」 「歩きながら話をしようか」  気持ちが多少落ち着いたところで、庭園を見て回ることにしました。  今日はゆっくりと時間が取れないことは手紙で事前に伝えているので、ご承知だとは思うのですが、今確認するのは野暮なことかもしれません。  時間は気になってはいても、レイ様のそばは居心地が良くて離れがたく思ってしまいます。
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