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生い茂った木々が程よい木陰を作ってくれています。見上げると青い空が広がっていました。
ぴーひょろろ。
トンビの声でしょうか? 空の上から聞こえてきました。
世の中は平和だわ。現実逃避したい気分。
「で、ローラ。さっきのお菓子の件だけど」
「レイ様、そのことについてはもう……」
聞きたくない。
「うん。だから聞いて」
逃げ腰になった事に気づいたのかレイ様は私を抱き込みました。
こんな時のレイ様の行動は素早くて、察知能力に長けてらっしゃるわ。耳も塞げないんですもの。
切なくて胸をきゅうっと絞られるように苦しい。なんでこんな気持ちになるのかしら。
「あれはディアナからもらったんだ」
「⁉」
えっ。ディアナ? えっ……想像もしていなかったわ。これは、どう理解すればいいのかしら?
ディアナって料理はしない人だと思ったのだけど、レイ様のためにお菓子を作ったってことなの? でも、ディアナには仲睦まじい婚約者様がいるわ。
どういうことなのでしょう? グルグルと頭の中にいろんな思いが交錯して駆け巡っていきます。
「そうじゃなくて、言葉を間違えた。そうじゃなくて……」
「……」
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