38 ディアナside⑤

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 実はルナ・テラスは馴染みのカフェ。  ローズ様もアンジェラもお気に入りのお店の一つなのよ。  王家の御用達に指定していないから、知らない貴族も多い。店主もそんな称号には興味はない。  ある貴族が趣味で始めたものだから、限られた顧客でのんびりと運営する方が性に合っているらしいわ。  お祖父様の友人でわたしも随分とかわいがってもらってたおかげで、いつもなら顔パスなのよね。少々のわがままを聞いてもらえるくらいには親しいのよ。今回のようにね。   「はあ。美味しいわねえ」  苺のショートケーキを一口食べたアンジェラが感嘆の息を漏らす。  これはルナ・テラスの一番人気。やはりこれは外せなかったわ。  わたしもチーズケーキの次に好きなのよ。   「そういえば、先日、ビビアン様とルナ・テラスに行ってきたわ。フローラも一緒に」 「ビビアン嬢と? フローラちゃんと一緒なんて、珍しい取り合わせね」 「放課後に運悪く捕まってしまって、お茶をすることになったのよ。連れていかれたのがルナ・テラスだったのだけど、随分と自慢げだったわね」 「ルナ・テラスは一見お断りのお店だものね。誰でも入れるわけではないから、貴族のステータスだと言われているお店でしょう。自慢したくなるのもわからなくはないけれど、普通はしないわね。はしたないもの」  特権を享受しても謙虚なタイプと人々に吹聴して自慢する虚栄心の塊のタイプ。たまにいるのよね。後者のタイプが……  そんなタイプだと知っているから、私がお店に入ってきても特別なもてなしはなかったのよ。
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