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ビビアン様には丁重な挨拶はあったけれど、私には初対面の接し方。
私が常連客なんてばれたら、彼女の面目丸つぶれですものね。そこは店側のTPOがしっかりと教育されているということ。
おかげで、ビビアン様の虚栄心も自尊心も保たれたと思うわ。
「それにしても、相手は公爵令嬢なのに、運悪くって、ビビアン嬢も気の毒ね」
ツボはそこだったのかしら?
アンジェラはぷっと吹き出すとケラケラと笑い出した。
相当ウケたのか涙まで出てるわ。無表情な侍女が素早くハンカチを渡している。
笑いすぎ。
なかなか笑いの止まらないアンジェラを遠い目で見ながらケーキを口に運ぶ。飾りの苺の大きいこと。馥郁とした苺の甘さがじゅわっと口の中に広がって、言葉にならないくらいに美味しい。
まだ、笑ってるわ。
そんなにウケることかしらね。しょうがない、しばらく好きにさせとくわ。
そして、ひとしきり笑ったアンジェラが落ち着いたところで話を切り出した。
「ビビアン様よりも気の毒なのはフローラの方よ」
「フローラちゃん? 何があったの」
心配げに眉を顰めたアンジェラにあの日の出来事を話して聞かせた。
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