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39 遠い告白
「「きゃあ」」
突然、悲鳴にも似た令嬢達の黄色い声が大ホールに響き渡りました。
何事かと声のした方を振り向くと、目に飛び込んできたのは正装を着こなしたレイ様の姿。髪型も後ろに撫でつけてきっちりとしたスタイル。
自然に任せた髪型とトラウザーズにシャツにタイとラフな服装しか見たことのなかった私は、普段とは違う装いに見惚れてしまい、レイ様から目が離せなくなりました。
普段着の飾らないレイ様も素敵でしたが、正装姿はさらに美貌を引き立てています。髪を上げたらこんなに美しさが際立つとは思ってもいませんでした。
それはみんな同じようでレイ様の姿を追っています。
頬を染めて見惚れている令嬢達や眼福とばかりに、キャッキャウフフと手を取り合って喜ぶ令嬢達。
一気に華やいだムードに会場が騒がしくなりました。
「今夜は出席したのね」
騒めく令嬢達を横目に隣にいたディアナの声が耳に届きました。
今夜は第二王子であるユージン殿下とポラリス・デルパール公爵令嬢の婚約祝賀会。
王城の大ホールでは招待された貴族達で賑わっています。
レイ様は国王両陛下はじめ王族の方々に挨拶をすると用意されていた椅子へ座りました。
令嬢達の熱い視線はレイ様に向けられたままですが、それを知ってか知らずか、それとも、当然のことなのか平然としていらっしゃいます。
いつもの人懐っこい笑顔はなく、冷めたような無表情さに少し寂しさを感じましたが、壇上に座るレイ様は堂々としていて気品もあって王族の風格を纏った王子様。
手の届かない遠い人のようです。
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