39 遠い告白

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 ざわざわと騒めく観衆達。  手を取られてホールの中央へ。何組ものカップルが楽しそうにダンスを踊っています。 「私でよかったのですか? ご令嬢達が順番を待っていらっしゃったようですが」  よく考えれば、ダンス待ちの列から外れたところにいたので、その資格はないような気がします。見向きもされなかった令嬢達の中には不服そうな顔した方が何人かいました。ファーストダンスのあとは誰と踊っても自由ではあるのですけれど。   「ローラと踊りたかったからね。苦手なダンスも練習したんだ」 「!」  なんと答えたらいいのでしょう。  ドキドキとした胸の鼓動を抑えきれません。  顔、赤くなってないかしら? 「あの……レイ様はダンスが苦手なのですか?」  おずおずと切り出すと 「うん。苦手、というより嫌いだったな」  嫌い? ちょっと予想外の答えが帰ってきました。  ダンスは王族にとっても貴族にとっても必修項目。ダンスのスキルは大事です。  人間ですから、苦手なものや嫌いなものがあっても不思議ではないですが、レイ様にも当てはまるとは思いませんでした。  私も得意かと聞かれれば否ですけれど。人のことは言えませんね。
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