39 遠い告白

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「ブルーバーグ侯爵令嬢。テンネル侯爵家が次男スティールと申します。ぼくと踊っていただけませんか?」  テンネル侯爵家?  驚きに目を瞬かせていると彼からフッと微苦笑が漏れました。 「やっぱり、覚えてませんよね?」  図星を刺されて返答に困りました。  会ったのは一回か二回くらい?   挨拶をした程度で顔を覚えるには機会も少なすぎました。確か、隣国に留学されたと聞いていたのですが、一時的に帰国されたのかしら? 「すみません」 「いいんですよ。挨拶程度では覚える暇もなかったでしょうからね。踊っていただけますか?」  黒縁の眼鏡の奥から覗く穏やかな青い瞳。波打つ栗色の髪。人目を惹く容姿ではないけれど、人柄の良さを現わしているような柔和な面立ち。  エドガー様とは性質が正反対な印象を受けました。 「はい」  元婚約者の弟。  微妙な立ち位置ですが、彼に悪印象はありませんし、婚約解消した今は他人ですから受けても問題はないでしょう。 「兄のことはすみませんでした」  スティール様の突然の謝罪に足が止まってしまい、つんのめりそうになった私を彼が支えてくれました。 「ありがとうございます」  ダンスの途中で転びそうになるなんて恥ずかしいわ。 「いえ。それよりも大丈夫でしたか? どこか痛めませんでしたか?」 「大丈夫です。どこも痛いところはありませんわ」  ちょっとつまずいただけですし、すぐに受け止めてくれたので大事に至らずにすみました。
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