39 遠い告白

9/30
前へ
/774ページ
次へ
「よかった」  心底ほっとしたように微笑んだスティール様は、とても優しい方なのでしょう。  もしも、エドガー様が彼のような性格だったら、もしかしたら、私達は上手くいっていたかもしれません。たらればを考えても、現実は現実ですものね。変わることはありません。  ふとよぎった想像をすぐに打ち消しました。 「エドガー様のことで謝る必要はありませんわ。すでに両家で解決したことですから」 「そうでしたね。余計な事でした」  音楽はまだ続いています。私達はダンスを再開することにしました。  こんなに婚約解消の件が立て続くと気分が滅入ってしまいます。それはやはり私が傷物だから?   ネガティブな気持ちに引きずられるのを払拭させたくて、スティール様に話しかけました。 「スティール様は留学していらっしゃるのですよね?」 「ええ。してましたよ。今はこちらの学園に編入しています」 「そうだったのですか?」  知らなかったわ。 「でも、新学期には再編入する予定でいます。あちらの方が僕には合うようなので」 「そうなのですね。よければお話を聞かせてもらえますか?」  踊ることに専念した方がよいのでしょうが、ポジティブな気分に浸りたくて留学の話を聞きたくなりました。 「いいですよ。何から話しましょうか」  快く引き受けてくれたスティール様は温和な話し方がとても好印象で、留学先の話に興味は尽きず、ユーモアも交えたエピソードも楽しくて、短い時間でしたが、有意義なひとときとなりました。 
/774ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3362人が本棚に入れています
本棚に追加