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「よかった」
心底ほっとしたように微笑んだスティール様は、とても優しい方なのでしょう。
もしも、エドガー様が彼のような性格だったら、もしかしたら、私達は上手くいっていたかもしれません。たらればを考えても、現実は現実ですものね。変わることはありません。
ふとよぎった想像をすぐに打ち消しました。
「エドガー様のことで謝る必要はありませんわ。すでに両家で解決したことですから」
「そうでしたね。余計な事でした」
音楽はまだ続いています。私達はダンスを再開することにしました。
こんなに婚約解消の件が立て続くと気分が滅入ってしまいます。それはやはり私が傷物だから?
ネガティブな気持ちに引きずられるのを払拭させたくて、スティール様に話しかけました。
「スティール様は留学していらっしゃるのですよね?」
「ええ。してましたよ。今はこちらの学園に編入しています」
「そうだったのですか?」
知らなかったわ。
「でも、新学期には再編入する予定でいます。あちらの方が僕には合うようなので」
「そうなのですね。よければお話を聞かせてもらえますか?」
踊ることに専念した方がよいのでしょうが、ポジティブな気分に浸りたくて留学の話を聞きたくなりました。
「いいですよ。何から話しましょうか」
快く引き受けてくれたスティール様は温和な話し方がとても好印象で、留学先の話に興味は尽きず、ユーモアも交えたエピソードも楽しくて、短い時間でしたが、有意義なひとときとなりました。
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