39 遠い告白

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 王族の方々の前には挨拶と婚約を寿ぐために貴族達がずらりと並んでいますが、レイ様の姿はありません。  きょろきょろと見回すも見つかりません。  もしかしたら、宮に戻られたのかしら?   人の集まる場にはほとんど出席なさらないと聞いていたから。  あとで会ってほしい。話があるって聞いたような気がするのだけれど、聞き間違いだったのね。  落胆する気持ちを抱えたところでどうすることもできずに、気を紛らわせるようにディアナを探します。  いたわ。  ホールの中央でハイスター公爵様と踊っていました。  美男美女。  こちらも素敵なカップルよね。  物心つく前から決められていた婚約だったと聞いたけれど、ディアナも公爵様も幸せそう。あらかじめ決められた結婚だったとしても、愛は育めるのよね。羨ましいわ。  ズキッと胸の奥が痛くなりました。  二杯目のドリンクを手にして煽るように一気に飲みました。  はあ。  これではやけ酒のようだわ。  ちょっと、頭を冷やしてこようかしら。  外に目をやると広いテラスには明かりが灯されて数名の貴族達が談笑しているようでした。私はテラスを通り抜けて庭園へとやってきました。  王城の庭園は手入れが行き届いていて洗練されています。テラスほど明るくはないですが、所々に灯された明かりが淡い光彩を放っていて、一人になりたい私にはちょうど良い雰囲気です。  ベンチを見つけて座るとやっと一息つけました。  何度も踊ったせいか、足も少し痛いですし。社交場に出るのも久しぶりでダンスも久しぶり。  いつ踊ったのかしらと記憶を辿って後悔しました。
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