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手を引かれて木々の合間をぬいながら歩いて行きます。
ほどなくして視界がパァと開けたと思ったら、大きな噴水が目に入りました。大の大人でも泳げそうなくらいですから、大きなというより巨大なと言った方が合っているかもしれません。
飛沫を上げながら噴き出す噴水のてっぺんには、体を寄せ合う二羽の白鳥の彫刻が鎮座していました。
そこを囲むようにベンチやテーブルが見えました。ここは王族の方の憩いの場所なのかもしれません。散歩するにも良さそうです。
「ここまでくれば大丈夫だろう。王族以外は誰も入れないからね」
「私が入っても大丈夫でしょうか?」
恐る恐る尋ねました。
貴族達と共有する場所とはあきらかに違います。
静謐さの中にも神聖で清雅な雰囲気が空間を支配している聖域に、私がいてもいいのかと畏れ多い気持ちになります。
そんな私の思いとは裏腹にレイ様はキョトンとした顔で私を見つめていました。
「俺が許可したから大丈夫だよ」
愛おしげに目を細めるレイ様に胸の奥が甘く疼きます。
思いを自覚すると、こんなにもひとつの表情が胸を打つのだと初めて知りました。
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