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レイ様はあまりにも優しすぎるので勘違いしそうにもなります。
甘い夢は見ないようにしなければ、失礼になるでしょうし、彼はきっと私なんかを好きになるはずはないのですから。
「疲れただろう? 座ってゆっくり話さないか」
「はい」
木製ではなくクッション性のある柔らかいベンチ。
ソファといってもいいくらいの座り心地のよいもので、それだけでも別空間だとわかります。
「レイ様、手を……」
「んっ?」
物音に気付いて場所を移動した時から、ずっと手をつないだままでした。
「もうそろそろ、離して頂いても……」
「いやだ。また、逃げられたらいやだからね。離さない」
「逃げませんよ」
たぶん。心の中でつけ加えて返事を返しました。それでもレイ様は納得していない様子。
「この前だって逃げたでしょう? なぜ? 話があると言ったのに」
「あれは……時間がなくて、あ、あの、あの……どうしても……」
あの日の事を思い出して、みるみる顔が朱に染まっていきます。
レイ様への気持ちを自覚しましたなんて言えるわけもなくて、どう言い訳をしたものか、あたふたする私に何かが覆いかぶさったかと思ったら、レイ様に抱きしめられていました。
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