39 遠い告白

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「本当はファーストダンスだって、ローラと踊りたかったんだ。二曲目だって、三曲目だって、本当はずっとローラと踊りたかった」 「……レイ様」  突然の告白にすぐに言葉が出てきませんでした。これはどう解釈すればいいのでしょう?  「私もレイ様ともっと踊りたかった。でも……」  言葉を紡ぐ前に人差し指を唇に当てられて、遮られました。  レイ様の長い指が唇に触れて大きく心臓が跳ねます。菫色の瞳が私の心を捉えて体の芯が熱く火照るよう。  ドキドキと逸る心臓の音が耳にやけに響くから、彼に聞こえやしないかと恥ずかしさがこみ上げてきて、ますます、顔が赤くなっていきました。  指を外して下さらないかしら?   このままでは声を出すこともできないですし、指の感触がリアルすぎて、このままでは心臓が壊れそうです。  私をジッと見つめていたレイ様の目元が緩んで笑みが浮かびました。  八重の薔薇が絢爛と咲き誇るような麗しい笑顔。あまりの美しさに息を吞みました。  今夜のレイ様はいつもと違う。  ぼんやりとそんなことを考えていると、唇から外された指は優雅に弧を描き私の胸元へ。  その様子がまるでスローモーションのように目に映って、呼吸をするのも忘れて見入っていました。  しなやかな動きで髪を一房掬い取ったレイ様は、顔を近づけてキスを落としました。  か、髪にキス⁈    一瞬、何が起きたのかわからなくて私のすべての機能がフリーズして頭が真っ白に…… 
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