39 遠い告白

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「踊ろうか? ローラと踊らないと今夜は眠れないかもしれない」  形の良い唇が言葉を紡ぎます。ちょっとおどけたようなレイ様の声にハッと我に帰りました。  ううん。  レイ様はきっと眠れるわ。だって、何事もなかったようにとても冷静だもの。  眠れないのは私の方だわ。  今夜の出来事が忘れられなくて。狼狽えているのは私だけで、レイ様にとっては何でもないことなのよ。自惚れてはダメよ。  ふわりと抱えあげられた体はすぐに地に下ろされました。  手を取られて空いている場所まで来ると呼吸を整えます。レイ様のリードを受けて体を動かしました。  今も大ホールではダンスが続いているのでしょうか。ここまで音楽は聞こえないけれど、体は自然とリズムを取っていました。レイ様のリードが素晴らしいからだわ。とても踊りやすい。  レイ様が曲を口ずさみます。聞き覚えのある音楽。私と踊った時の曲かしら?  つないだ手がお互いの体温を感じて、お互い見つめ合うと天にも昇る心地に自然と笑みが零れます。  レイ様が好き。  このまま、ずっと踊っていたいわ。永遠なんてないのに、願ってしまう。あの時の瑕疵が頭をもたげそうになるのを抑えて、抑えて、蓋をしました。  今は、今だけは無垢のまま幸せのままでいたい。
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