3363人が本棚に入れています
本棚に追加
「今夜はこれで眠れますね」
ちょっと茶目っ気を出して、冗談めいて言ってみました。
「まだ、眠れないかな? だから、もうちょっとだけつきあって?」
一曲では足りなかったのかしら?
レイ様と踊るのは楽しくて一曲で終わりにしたくなくて、頷きました。踊る準備をと思ったら、手を引かれて行ったのは先ほどのベンチです。
「話があると言ったのは覚えている?」
腰を下ろしたレイ様はまっすぐに私を見つめていました。そういえば、先日も言われたような気がします。ダンスではなく話がしたかったのね。
「はい」
また逃げ出すとでも思っていらっしゃるのか、真剣な表情のレイ様は私の両手をしっかりと握りしめています。
先日は完全なる私情で逃げましたが、今回はそんな心配はいらないと思うのです。どんな内容か想像もつきませんけれど、逃げ出すような事はないでしょう、きっと。
お菓子の話かもしれませんし、厨房の調整ができたとか、現実逃避しているような感は否めませんが、妙な邪推はいけませんよね。
覚悟を決めました。
最初のコメントを投稿しよう!