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「レイ様、お話というのは?」
今までにないくらいの真剣で真面目な表情のレイ様に私の心にも緊張が走ります。何か深刻な話なのでしょうか?
緊張しすぎて逃げ出したくなったわ。
どうしましょう。
がっつりと掴まれた手がそれを許してくれません。
「うん。逃げないでね」
釘を刺されました。
先ほどよりも距離も縮まっているような気がします。至近距離で話さないといけないことなのでしょうか。あまりの非日常な雰囲気にごくりと唾を飲み込みました。
二度目の覚悟です。
話を聞かないと帰してもらえないような気がしたので、大きく頷きました。
「俺は、ロー……」
バキ、バキッ。
突然、何かが折れたような大きな音が辺りに響きました。
レイ様の声は空へと吸い込まれて、最後まで発することが出来ませんでした。
誰も入れないはずの王族の庭園での不気味な物音に怖気が全身を襲います。レイ様が恐怖に震える私を抱き寄せてくれました。
私達は顔を見合わせて、それから、音のした方をゆっくりと振り向きました。
ヒッ。
思わず悲鳴が漏れました。
なぜ、ここに、ビビアン様が……
恐ろしいほどの瞋恚の目で睨みつけるビビアン様が立っていたのです。
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