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「申し訳ございません。少し道に迷ったようで、気づいたらここへ。申し訳ございません」
しおらしく謝るビビアン様の様子に先ほどの瞋恚の目つきなどどこにもありません。気のせいかもと思ってしまうくらいに見事な変身ぶりです。
私はまだあの表情が頭に焼きついていて、恐怖が先に立ち、ぎゅっとレイ様の服を握りしめました。
「そう。ここは王族専用の庭園なんだ。貴族が足を踏み入れる場所ではないんだよ」
「申し訳ございません」
穏やかに諭すレイ様に謝るビビアン様ですが、一向に立ち去る気配はありません。
「わかったのなら」
「フローラ様がご一緒のようですが、それならば、わたくしもよろしいのではありませんか。フローラ様とはお友達ですから」
私だとばれているのですね。こちらもビビアン様だとわかっているのでお互い様なのでしょうか。
顔を上げたビビアン様は自信ありげな笑みを浮かべてレイ様を見つめていました。嫣然たる様は私の目から見ても美しくて、男性なら一目で心を奪われるのではと思ってしまいます。
「俺は許可していない」
「なぜ、フローラ様と? 貴族は立ち入り禁止ではなかったのですか?」
拒否されているのはわかるはずなのに、レイ様が何を言っても聞く耳を持たず、なおも食らいつくビビアン様の態度に空恐ろしくなりました。
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